イカ釣り漁船と聞くと、漁師による専門的なイカ漁を思い浮かべる人も多いかと思いますが、イカが回遊している地域では、イカ釣りを楽しむ一般の人のために、沖合へ向かう専用のイカ釣り漁船を出しています。イカ釣りは難しいと言われていますが、シーズンになると多くの人がイカ釣りを楽しみ、そこにはプロと初心者の垣根はありません。イカ釣りは、最低限の知識とマナーさえ身につけていれば、実は誰でも楽しむことができる釣りの一つと言えます。
イカ釣りは、特に初心者には難しそうに感じるかもしれませんが、一般的な魚釣りとさほど大きな違いはありません。イカ釣り専用の竿や仕掛けが市販されているため、その中から選んで購入するだけで準備は整います。例えばヤリイカであれば、ヤリイカ専用の竿と、それに合った電動リールを準備します。スルメイカであれば、好みや経験にもよりますが、イカ釣り専用竿の中でもやや竿先が柔らかめのものが選ばれます。竿やリールの選択は、釣り道具店に行けば詳しく教えてくれるので、全く知識の無い状態でも何ひとつ心配する必要もありません。その他に必要な道具についても教えてくれます。
イカ釣りに必要な釣り道具は、竿とリールと仕掛け以外に、オモリやエサ、コマセ等です。他では寒くない服装やライフジャケット、クーラーボックスやタオル、酔い止めや日焼け止め、帽子やカッパなどがあります。釣り道具以外は、一般的にアウトドアに必要とされるものと何ら変わらないため、海が好きな人であれば特に身構える必要は無いのです。
イカ釣りに必要な道具について一通り羅列しましたが、道具を全てレンタルできる業者も存在します。正確にはエサやコマセ以外の全てになりますが、エサやコマセをその場で販売している業者も多く、実質的には手ぶらでイカ釣りに行くことも可能です。特に沿岸でイカのとれる観光地では、イカ釣り漁船を短時間出船している場合もあるなど、「長時間の本格的な釣りは億劫だけど、イカ釣りは体験してみたい」という人にもおすすめです。もちろん本格的にイカ釣りを楽しみたい人向けに、船を出している業者も沢山あるため、道具は無いけどイカ釣りにチャレンジしてみたい、という人にもおすすめです。
岸壁でのイカ釣りは、道具やエサを個人で準備する必要があり、やや敷居が高い面があります。しかし、イカ釣り漁船を出している場合は、道具をレンタルしている業者も多く、玄人から素人までいろいろなレベルの人の扱いにも慣れているため、対応もスムーズです。イカ釣りが盛んな地域では、自分のレベルに合った船をフレキシブルに選ぶことができます。
近年は、女性の釣りファンが増えていいます。これはイカ釣りに関しても同様で、船でイカ釣りを体験したいという女性も多く、特にイカが沿岸に寄ってくるシーズン中はなかなか船の予約が取れないほどの人気です。海は天気や風の影響を受けやすく、荒天やシケの際には出船できないため、予約さえできれば必ず釣りができるというわけでは無いことも、人気の高さの要因と言えます。出船時間は、イカは早朝が釣れやすいという特徴があるため、多くは早い時間の出発になります。もし2便以上の船がある場合は、出来る限り早い時間の船がおすすめです。
イカが良く釣れる時期は、イカ釣りファンはもちろん、普段はイカに興味を示さない釣り人もやってきます。このため、早い時期から予約を入れておくか、あまり人が集まらない平日がおすすめです。観光地に良く見られる短時間のイカ釣り体験であれば、午前中やお昼頃など、乗りやすい時間帯は混雑します。比較的空いていて、イカもよく釣れる早朝が狙い目です。
イカの回遊しているタナは、大体決まっていますが、昼と夜では大きく違います。タナとは海の深さを表し、表層や低層といった言葉を使います。夜には表層に出てきますが、昼間は水深数百メートルに達するような深い層を回遊することもあります。スルメイカは基本的に中層を回遊していますが、ヤリイカは低層を回遊するなど、種類によっても異なるため、ターゲットとしているイカによってポイントを変える必要があります。また、釣り上げたイカは、真水に触れると白濁してしまうという特徴を持っているため、陸に揚げるまでは海水に入れておくか、真水が入らないような袋に入れておきます。
イカの種類によっても異なりますが、例えばスルメイカであれば、昼間は水深80メートル前後から、時期によっては600メートル前後の深さまで回遊しています。5月から10月頃までが、良く釣れます。ヤリイカは水深100メートル以上の低層を好み、12月から5月頃までがシーズンとなります。それぞれの特徴を把握すれば、釣るポイントも自ずと決まってきます。
釣り方のコツも、イカの種類によって異なるため、それぞれの特徴を掴むことが大漁への近道となります。スルメイカは基本的に攻撃的な性格を持ち、エサを求めて活発に動き回ります。竿を動かすほどに反応するため、大きくオーバーに動かすのがコツです。一方ヤリイカは、スルメイカのような獰猛さは無く、当たりもソフトです。このため、さほど大きなシャクリ動作は必要ありませんが、当たりがわかりづらいという特徴もあります。ヤリイカは低層を回遊しているため、オモリが底についたら多少リールを巻き上げ、再度オモリを底まで落とす、ということを繰り返し行います。
船釣りは、釣りの最中に強風が吹くことがしばしばあります。これはイカ釣りの時も同様で、それを回避するため竿先は船からあまり出さないようにします。イカ釣りのコツは、シャクリ動作にあると言っても過言ではありません。シャクリとは、竿を上下に動かすことで、イカは海中でのエサの上下の動きを見て仕掛けに抱きついてきます。イカの種類に合わせたシャクリ動作をマスターすることが、大きなポイントになります。
敷居が高いと言われているイカ釣りですが、コツさえ掴んでしまえば一般の釣りと同じで、さほど難しいものではありません。一部特殊な道具が必要なこと、シャクリ動作が一種独特でわかりづらいこと、この2つのせいで、多くの人が敬遠しがちです。しかし、道具は釣り道具店で一式揃えることができるどころか、レンタルも可能です。シャクリ動作については、がむしゃらに動かすだけでは疲れるだけですが、イカの種類ごとに特徴を知ることで、効率的なシャクリ動作がわかり、あまり疲労すること無く、楽しく釣ることが出来るようになります。新鮮なイカの身は透明かつ美味ですが、イカ釣りをした人にしか味わうことができません。イカ釣り漁船でのイカ釣りは、他の魚釣りと同様か、あるいはそれ以上の魅力に溢れています。