小さくてキラキラと水の中を泳ぐ様はまさに宝石といえるタナゴは関東を中心に人気の釣りの対象魚です。見た目の美しさから観賞魚として飼育されることもあります。釣り場としては水草が生えているような穏やかな小川や、田んぼの中を張り巡らされた水路、川幅の広い河川や湖に繋がる河川とその周辺の止水域などの淡水エリアになります。江戸時代に殿様が女性の髪の毛で釣り遊んだことがはじまりと言われるタナゴ釣りを楽しんでみましょう。
江戸時代から親しまれるタナゴ釣りの魅力は、まず、見た目の美しさがあります。宝石のようと言われ、観賞魚としても人気があります。釣り上げた糸の先に宝石のように輝く姿を見て、すっかり虜になってしまったという人もいるほどです。また、10cm以上にもなるオオタナゴ以外はどの種類も6~8cmと小さいので、小さな竿と仕掛けで、水面のウキを静かに見つめて、当たりを逃さずに釣り上げるという繊細な釣りという部分も魅力の一つです。スポーツフィッシングの代名詞のようなブラックバスや、同じく引きの強いトラウトなどのような豪快な釣りとは違った楽しさがあります。
細い竿から釣り糸を垂らして、ウキを静かに見つめるというのんびりとしていながら、当たりを待つ緊張の一時はとても贅沢な時間です。強く豪快な引きはないけれど、向こう合わせは少なく、見逃してしまえば餌だけ取られてしまいます。うまく小さな当たりに合わせられるようになれば、水中の宝石を手に入れることができます。
釣りをするには様々な道具、釣具が必要になります。竿は小継振り出し竿を選びましょう。リールは必要ありません。釣り場によって使う竿の長さは変わりますが、長いものより、短めのものを選びます。水路などで座って釣るなら1~1.6mほどで、湖沼や河川など広めの場所なら3.6~3.9mほどがよいです。仕掛けはメーカーが出しているタナゴ仕掛けを手に入れます。針はとても大事で、これだけで釣果がずいぶんと変化します。旬の時期は特に小さいものも多いので、小さな針を使うと釣れる数も増えます。餌はグルテン練り餌が一般的です。
タナゴ竿という専用竿も販売していますが、高価なことが多いです。これからはじめるという段階なら、長さが合っていれば、千円前後のもので十分です。旬と言われる冬場にはその年に生まれた小さいものもいるので小さめの仕掛けや針を用意します。また釣具以外に、釣れた魚を入れておく水くみバッカン(生かしビク)や当たりを待つ間に座る折りたたみの椅子も用意しましょう。
全国各地に人気の釣り場がありますが、ここでは琵琶湖を紹介します。琵琶湖は世界的にも貴重な古代湖で、50種以上の固有種が確認されており、魚類も豊富な種類が生息しています。タナゴ釣りに人気のエリアは琵琶湖の湖北エリアで、ヤリタナゴ、アブラボテ、カネヒラ、シロヒレタビラの4種が生息しています。秋のカネヒラの繁殖期には、オスが鮮やかな婚姻色に染まり、水中では1尾のメスを数尾のオスが追いかけるという光景の観察も出来ます。琵琶湖の漁港脇の護岸、消波ブロック周りなど琵琶湖本湖だけでなく、琵琶湖へ流入する大小さまざまな河川や水路でもタナゴ釣りが楽しめ、タナゴ類以外にも様々な小魚が狙えます。
琵琶湖で人気の湖北エリアは長浜市や米原市といった名水百選に選ばれる湧き水豊富な場所です。また、琵琶湖水系は透明度が高く、水中をキラキラと泳ぐ宝石のような姿を見ながらのサイトフィッシングが楽しめます。繁殖期のカネヒラのオスは全身が青と緑のグラデーションで、腹ビレと尻ビレが見事な婚姻色のピンク色になります。
闇雲に歩きまわっても疲れてしまうばかりです。ここなら必ず釣れるという場所はありませんが、ある程度は好みの場所があるので、そこをしっかりとおさえて探しましょう。オオタナゴは水底近くを好みますが、タイリクバラタナゴはそれよりも上の層を遊泳することが多いなど、種類によって違います。湖なら消波ブロックなどの障害物の近くが狙い目になります。池や川ならアシなどの植物の近くや大きな石の近くなど、やはり障害物付近を狙うことになります。そういった障害物のない田んぼ周辺の水路などは角になっている部分や水路の突き当りで水深が深くなっている部分にいることが多いです。
釣り場のポイントは種類だけでなく、季節などによっても変化します。アシ際や木の下など自然のもの、テトラポッドなどの人工のものなど、様々な水辺の障害物には絶好の隠れ場として多くの魚たちが好むポイントです。障害物が少ない場合は角になっている部分や水深が深くなっている部分、淀んでいる部分など、やはり隠れられる場所を好みます。
大体が6~8cmと小柄な種類なので、アタリもぐぐっと強いわけではありません。とても繊細なアタリを如何に逃さずにアワセるかがコツになります。アタリもウキが横に動いたり、ちょっと沈んだり、止まったりと色々な動きがあります。静かにじっくりとアタリを待って、小さなものを逃さずに、というのを心がけます。ウキが動いたら即アワセで釣れます。アワセのコツは、腕全部を振り上げるのではなく、肘を軸に腕を斜め後ろに起こすイメージでコンパクトに動かします。餌を飲み込んでこちらがアワセなくても魚が針にかかるという向こうアワセはありません。
小さいアタリを見逃さないというのが一番大事になります。穏やかな場所が多いので、しっかりとウキを見たり、竿に伝わる感触を感じましょう。細身の竿、小さな仕掛けや針など、道具も繊細なら、対象となる魚もとても繊細です。その繊細なアタリを逃さずに感じ取って、しっかりとあわせる。コツを掴めばもっと釣りが楽しくなるでしょう。
スポーツフィッシングにある引きの強い魚たちとの格闘はありませんが、静かにアタリを待って、その一瞬を逃さずに釣り上げる楽しさがあります。古くから親しまれる美しい宝石のような姿は、釣り上げる度にその綺麗な輝きに感動するでしょう。穏やかな水の流れに心を癒やされながら、ゆっくりとアタリがくるのを待つのも楽しいものです。竹の竿から静かに糸を垂らし、水面を見つめる姿は昔の掛け軸や書物に描かれている風景のようでもあります。タナゴの狙える釣り場は田んぼなどの身近な場所でもあり、また、初心者でもコツさえ掴めば簡単に釣り上げられるので、大人から子供まで楽しめます。