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お盆の時期が近づくと、「お盆に釣りに行ってはいけない」という話を耳にすることがあります。結論から言うと、これは各地に伝わる言い伝えのひとつであり、行くか行かないかは最終的に自分自身の判断で問題ありません。ただし、言い伝えとは別に、お盆の時期(8月中旬)の海には土用波(台風のうねり)やクラゲの増加、水難事故の増加といった、実際に気をつけたいポイントがいくつかあります。この記事では、言い伝えの由来と、公的な情報から見た海の危険、そして安全に釣りを楽しむための対策を紹介します。
「お盆に釣り・海はダメ」と言われる言い伝えの由来
お盆の時期に「海に入るな」「釣りに行くな」と言われる背景には、いくつかの言い伝えがあるとされています。地域や家庭によって内容は異なりますが、代表的なものとしては次のような話が伝わっています。
- 旧暦の7月頃は「地獄の釜の蓋が開く日」とされ、あの世から先祖の霊がこの世に戻ってくる期間だという言い伝えがある
- お盆はご先祖様を迎え、供養する期間であるため、殺生(魚を釣ること)を控えるべきだという考え方が伝わる地域もある
- 水辺に霊が引き込むといった俗信から、この時期は水辺に近づくこと自体を戒める言い伝えが残る地域もある
こうした言い伝えは全国共通のものではなく、諸説あり、地域や家庭によって伝わり方や重視される度合いに差があります。信仰や慣習として大切にしている方もいれば、特に気にしない方も多く、どちらの考え方も尊重されるべきものです。
言い伝えとは別に、お盆の時期の海で実際に注意したいこと
言い伝えを信じる・信じないにかかわらず、お盆の時期の海には実際に気をつけておきたい自然現象や事故リスクがあります。釣行を判断する材料として知っておくと安心です。
土用波(盆波)=遠方の台風のうねりが晴れた日でも届く
「土用波」とは、夏の土用(7月20日頃)から晩夏にかけて、日本近海に台風が接近していなくても、遠く離れた海域の台風から発生したうねりが伝わってくることで生じる高波のことです。うねりは波頭が丸く波長が長いため減衰しにくく、沖縄付近の台風によるうねりが約1,500km離れた静岡・千葉の海岸まで到達した例も伝えられています(出典:Wikipedia「土用波」)。気象庁の解説でも、台風に伴う波はその場で生じる「風浪」と、遠方から伝わる「うねり」に分けられ、うねりは長距離を移動しても減衰しにくいと説明されています(出典:気象庁「台風に伴う高波」)。空が晴れていて風が弱くても、足元をすくわれるような高波が突然打ち寄せることがあるため、堤防や磯からの釣りでは特に注意が必要です。
離岸流=岸から沖へ向かう流れ
海上保安庁は、岸から沖へ向かって流れる「離岸流」について、流れの速さが毎秒1〜2メートルに達することがあり、磯場や防波堤の周辺では構造物の影響でより強い流れが生じる場合があると説明しています。毎秒1〜2メートルは、一般的な人が泳いで岸へ戻るのが難しい速さです。万が一流されたときは、流れに逆らって岸へ向かって泳がず、岸と平行の方向へ移動して流れから外れるのが基本とされています(出典:海上保安庁 銚子海上保安部「離岸流について」)。釣り人は泳ぐつもりで海に入るわけではありませんが、足を滑らせて落水したときに関わってくる知識です。
クラゲの増加
お盆の時期は、アンドンクラゲなど刺されると痛みを伴うクラゲが目立ち始める時期でもあります。新江ノ島水族館の解説によると、クラゲが急に大量発生するわけではなく、海水温の上昇でクラゲが成長し刺激性が増すことに加え、海水浴・釣り客が増える時期と重なるため被害が目立ちやすくなるとされています(出典:新江ノ島水族館「お盆を過ぎたらクラゲが増える?」)。素手での取り込みや、浅瀬での不用意な足の運びには注意しましょう。
台風シーズン本番と釣り場の混雑
8月は台風の接近・上陸が増える時期であり、天気予報では晴れでも、離れた海域の台風の影響でうねりや強風が生じることがあります。またお盆は帰省やレジャーで釣り場・海水浴場が混雑しやすく、堤防や磯場では場所取りや人の多さに伴う転落・接触のリスクも高まりやすい時期です。
水難事故は夏に多く発生している
警察庁の発表によると、令和8年夏期(同庁が「7〜8月の2か月間」と定義する期間)の水難は436件発生し、水難者535人、うち死者・行方不明者は226人でした(速報値。出典:警察庁「令和8年夏期における山岳遭難及び水難の概況について」)。また海上保安庁の速報値でも、7〜8月のマリンレジャーに伴う人身事故者数は200人を超え、死者・行方不明者は70人台にのぼるとされています(出典:海上保安庁「夏季(7-8月)の船舶事故・人身事故発生状況(速報値)」)。いずれもお盆の日だけを取り出した数字ではなく夏期全体の集計ですが、この時期に水辺での事故が集中しやすいことは公的な統計からもうかがえます。
釣りをする人にとって見逃せないのは、その内訳です。同じ警察庁の資料では、水難者535人を行為別に見ると多い順に「水遊び」122人(22.8%)、「水泳」93人(17.4%)、「魚とり・釣り」80人(15.0%)となっており、釣りは3番目に多い行為です。前年と比べると、水泳は26人増えた一方、水遊びは15人減、魚とり・釣りは16人減でした。ただし、減ったとはいえ令和8年夏期も「魚とり・釣り」で80人の水難者が出ており、釣りの水難が少ないと言える数字ではありません。場所別では、死者・行方不明者226人のうち海が114人、河川が83人でした。
それでもお盆に釣りに行く場合の安全対策
言い伝えを気にしない場合でも、上記のような実際のリスクを踏まえて、次のような対策をしておくと安心です。
- ライフジャケットを着用する(浮力体としてだけでなく、万が一の転落時に発見されやすくなります)
- 熱中症を避けるため、こまめに水分をとり、日陰や休憩をはさむ(環境省は暑さ指数をもとにした熱中症警戒アラートを毎年4月下旬〜10月下旬に提供しています)
- できるだけ一人ではなく、複数人・家族で釣行する
- 出発前に天気予報だけでなく、波浪予報やうねりの情報も確認する
- 釣行前に家族や友人へ行き先と帰宅予定時刻を伝えておく
- クラゲに刺された場合に備え、応急処置の知識を持っておく
- 堤防・磯場では滑りにくい靴を履き、足元が濡れている場所には近づきすぎない
なお、ライフジャケットの着用が法律で義務づけられているのは小型船舶に乗る場合です(国土交通省。総トン数20トン未満などの小型船舶が対象で、違反すると船長に違反点数が付きます)。堤防や磯からの釣り、いわゆる陸っぱりは、この着用義務の対象ではありません。ただし警察庁は水難防止の呼びかけとして、釣りやボートで水辺に行くときはライフジャケットを着用するよう促しています。「義務ではない」ことと「着なくてよい」ことは別だと考えておくと安全です(出典:国土交通省「ライフジャケットの着用義務について」)。
出発時間の目安に悩んだら、「釣りに行くのに適した時間帯」という質問も参考になります。
お盆は釣り場が混み合う分、「釣りをきっかけに人脈が広がることはあるか」という質問のように、他の釣り人との交流が生まれることもあります。
ライフジャケットの選び方は、以下の記事で詳しく解説しています。
ライフジャケットの選び方とおすすめ
まとめ|行く・行かないは自分の判断で
「お盆に釣りに行ってはいけない」という話は、地域に伝わる言い伝えのひとつであり、科学的に証明されたものではありません。一方で、お盆の時期の海には土用波やクラゲの増加、台風シーズン、水難事故の増加といった、実際に注意すべきリスクがあることも事実です。ご先祖様を大切にする気持ちから釣行を控えるのもひとつの選択ですし、安全対策を万全にしたうえで釣りを楽しむのもひとつの選択です。どちらの考え方も尊重されるべきものであり、大切なのは自分と家族が納得できる形で夏の釣りを過ごすことです。
実際にお盆に釣りに行くかどうか、他の読者がどう考えているか気になる方は、こちらのQ&Aもあわせてご覧ください。
Q&A:皆さんはお盆に釣りに行きますか?(読者の体験談)
お盆や夏休みに釣りに出かける場所を探している方は、全国の釣り場ガイドも参考にしてください。
全国の釣り場ガイド一覧
※本記事の内容は公開情報の確認日(2026年7月16日)時点のものです。
